多くの人が避けて通れない問題。それが近しい親族の死、「相続」という問題です。
自分の親が死んだら、兄弟が死んだら、こうした問題を考える事は不謹慎、と思う人もいるかもしれません。
しかしいざ、近しい人が亡くなられた時は、様々な手続きや葬儀の手配などに追われてしまいます。
そのため、事前に考えられることはあらかじめ考えておく、ことが重要ではないでしょうか。
その分、いざという時故人を偲ぶ時間を取る事ができるのです。
特に事前にしっかり知識を身につけ、考えておきたい問題が『相続』について、です。
相続については、感情や損得勘定などが入り交じり、揉める事が多くなるため、ドラマや小説などで扱われることも多い題材です。
そのため将来、子や孫、そして配偶者に財産を残したいと思われる方はもちろん、相続する側であっても正しい知識を身につけておいた方が良いのです。
そこでこのコラムでは、身につけておきたい相続にまつわる様々な知識を、わかりやすく伝えていきたいと思います。
その第一回目として取り上げるテーマは『相続人』です。
目次一覧
相続人の優先順位を確認
人が亡くなったら遺産相続が起こりますが、このときに遺産を相続するのが『相続人』です。
法律では基本的に、死亡した人の親族が財産を相続する、とされています(遺言状などで親族以外の人に財産を残すこともできます)。
ただ親族には幅があります。亡くなられた方の配偶者(夫・妻)、親、祖父母、子供、孫、兄弟姉妹、甥姪、従兄弟・従姉妹など様々な親族がいたら、誰が相続人になるのでしょうか?
こうした問題を解決するために、法律で誰が相続人になるか決めており、これを法定相続人と言います。さらにその優先順位や取得する割合を決めています。
ではどのような人が、相続人となるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
必ず法定相続人となる配偶者
夫や妻など、亡くなられた方の配偶者は必ず法定相続人となります。
配偶者しか法定相続人がいない場合は、配偶者だけが法定相続人となります。
第一順位の相続人は子供
法定相続人のうち、優先順位の最も高いのが、子供です。子供が複数いる場合は、相続分は頭割りで計算されます。
例えば、夫が亡くなり妻と子供2人が残された際は、法定相続人は妻と子供2人が法定相続人となり、
妻が50%残りの50%を子供2人で分けることになり25%ずつとなります。
子供が1人であれば50%となりますが、3人であれば一人あたり16.6%、4人であれば12.5%となっていきます。
では、子供がすでに亡くなっていた場合はどうなるでしょうか?
もし子供に子供、つまり孫がいた場合は、その孫は法定相続人となります。この孫は、子供の代わりに相続する、という意味で代襲相続人と言われます。
この代襲相続人の法定相続分は、子供と同じ扱いになります。代襲相続人が複数いる場合は、やはり人数で頭割りされます。
先ほどのケースのように、夫が死亡し、妻と子供が二人だが、うち一人が亡くなりその子供がいた場合は、
妻が50%、子供が25%、孫2人が12.5%ずつ、となります。
また、子供や孫が死亡していた場合は、ひ孫が、というように直系であれば下に続いての相続(代襲相続人)として認められています。
第二順位 親
亡くなられた方に子供も孫もいない場合は、親が法定相続人となります。
配偶者がいた場合は配偶者と親が相続人となりますが、子供がいた場合と少し計算が違うので注意が必要です。
子供がいた場合、配偶者50%、子供50%でしたが、子供がおらず配偶者と親で相続する場合、配偶者が3分の2、親が3分の1となります。
両親とも健在の場合、この3分の1を2人で分ける事になるため、6分の1ずつの相続となるのです。
また、子供がおらず、親もすでに亡くなっている場合、代襲相続とは言いませんが、祖父母が生きていれば同じように祖父・祖母が、となります。
第三順位 兄弟姉妹
亡くなられた方に、子供や孫、親や祖父母がいない場合には、兄弟・姉妹が法定相続人になります。
ただ、ここでも配偶者と兄弟姉妹が相続する際の割合が異なります。配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
兄弟姉妹が複数いる場合は、この4分の1を頭割りで計算します。
兄弟・姉妹がなくなっている場合
兄弟・姉妹が亡くなっている場合は、甥・姪が代襲相続する事になります。
ただ、ここで注意が必要なのが、甥・姪の代襲相続は一代限りだ、ということです。
代襲相続の場合、子供が亡くなっていた場合孫が、孫が亡くなっていた場合はひ孫が代襲相続人となります。
また、親の場合も、親が亡くなっていた場合祖父母が、祖父母が亡くなっていた場合曾祖父母が、とたどっていく事ができます。
しかし兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪に限られており、その子供が代襲相続人になる事は出来ません。
遺言状で他の人に財産を指定しても、法定相続人には権利がある
近年、終活などで話題となっている遺言状。この手続きを行う事で、自分の残す財産=遺産をある程度自由に処分することができます。
しかしこれは万能ではありません。この人には相続させたくない、と思っても、法定相続人には一定の遺産を受け取る権利があります。
それが「遺留分」です。
遺留分の割合について
これは遺留分の割合は法定相続分の2分の1が基本となります。(一部例外あり)
つまり妻と2人の子供が残された場合、遺言状で他に財産を譲る場合でも、妻は50%の2分の1、25%が。
子供はそれぞれ25%の2分の1、12.5%が遺留分として相続する事が出来るのです。
子供がおらず、妻と母親が残された場合は、妻が3分の2×2分の1=3分の1を、母親は3分の1×2分の1=6分の1が遺留分となり、相続する事ができます。
ただし兄弟姉妹については遺留分はない、ということも覚えておく必要があります。
相続人でトラブルにならないように
遺産を「誰が」相続するか、というのは非常にトラブルになりやすいものです。
そのため自分が死んだら、誰が遺産を相続するのか、あらかじめ確認しておいた方が良いでしょう。
特に揉めるケースとしては、以下のようなものがあります。
養子がいる場合の相続人
養子をもらっていた場合、当然のように養子にも相続権が発生します。法律では実子と養子の取り扱いに差はありません。
養子も実子と同じだけ、遺産を受け取る権利があるのです。
連れ子がいる場合の相続人
配偶者が連れてきた子供、いわゆる「連れ子」がいた場合、です。
ただ、連れ子は単純にそれだけで法定相続人となることはできません。
例えば妻とその連れ子、親が生きていた場合、妻と親が法定相続人となり、妻が3分の2、親が3分の1を相続する事になります。
連れ子に財産を相続させるには、養子縁組をしていなければなりません。
養子となっていれば、通常の子供と同じ扱いとなり、妻と子供が財産を相続する事になります。
嫁・姑の問題について
配偶者と自分の親の中が悪い場合は注意が必要です。これは法律的に、というより感情的な面でトラブルになりやすいのです。
子供がいた場合、法定相続人の優先順位により、妻と子供が全ての財産を相続する事になり、両親にはまったく遺産が渡りません。
嫁・姑問題などでトラブルを抱えていた場合、妻が旦那の死亡により遺産を全て持って家を出てしまい、両親が路頭に迷う、というケースもあります。
これを防ぐには、遺言状等を活用し、両親にも遺産が渡るよう手続きを取る必要があります。
終わりに、相続人をまず確認しよう
相続、というと非常に面倒くさい、複雑そう、というイメージがあります。
相続人について簡単に書いたつもりですが、かなりのボリュームになってしまいました。ただ、全てを知る必要はありません。
自分の近しい人が亡くなったらどの人が相続人になるのか。それだけでも把握しておけば、いざという時でも慌てずにすみます。
また、家庭の構成が複雑な場合、トラブルを抱えているような場合は、あらかじめ準備も必要になってきます。
自分が死んだらどうなるのか?相続人について知るだけでも、様々な対処をする事が出来るのではないでしょうか。
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