相続という現場は、人の死という避けがたい事実に加え、様々な人間の利害関係がからむため、非常にトラブルが起きやすい場でもあります。
実際、相続で揉めた結果、仲の良かった家族が離散してしまったり、将来にわたって大きな禍根が残ったり、大きな揉め事に発展しやすいのです。
そのため相続に関して、事前にどのようなトラブルが起きやすいのか、そしてそれをどのように防ぎ、いざ起きてしまった時にはどのように解決するべきか。
あらかじめ知識を持っておくだけで、防げる物も数多くあります。
そこで今回は、遺産相続で最もトラブルに直結しやすい遺産分割の手続きについて触れてみたいと思います。
目次一覧
相続人全員で遺産分割協議書を作成しましょう
遺産についてどのように分けるか、それを話し合うのが遺産分割協議です。
ここで相続人をだれにするか、そしてどのように分けるかを話し合い、決まったことをまとめておくのが遺産分割協議書です。
この遺産分割協議書は、必ず必要なものではありません。
しかし、遺産分割協議書を作成する事で、相続人の合意形成が明確になり、無用なトラブルを防ぐ事が出来るため、一定以上の財産を相続する場合は作成する事をお勧めします。
遺産分割協議書は、公的な書類ではありません。そのため、決まった書式などはありません。
ただ、相続に関する取り決めを、口約束ではなく書類に残す事で、後で言った・言わないの水掛け論を防ぐ事ができます。
また、しっかりと用件を満たしていれば、不動産・預貯金・株式の名義変更や相続税の申告書への添付などに使う事もできます。
遺産分割協議書の作成のポイント
ここでポイントとなるのが、遺産分割協議書は自分達で作成するのは避けた方が良い、ということです。
遺産分割協議書の作成段階でミスをしてしまうと、相続人同士でトラブルに発展してしまったり、文言一つで感情論担ってしまいがちなのです。
特に関係者が多くなればなるほど、遺産分割協議は難航しやすくなるもの。
そのため遺産分割協議書の作成は、税理士・弁護士といった専門家が、第三者として参加する事が望ましいのです。
この遺産分割協議書の作成は、できるだけ速やかに行うことが望ましいといえます。
なぜなら、遺産分割協議が速やかにまとまれば、相続税の優遇措置を受けることができる場合があります。
遅れてしまえば、本来払わなくてよい分まで、税金として取られてしう可能性があります。
また、時間の経過により事実関係や権利関係が変化してしまうこともあります。特に事業をやられていた方などの場合、日々の財産状況の変化が大きいので注意が必要です。
時間が経てば経つほど、その変化は大きくなり、調査をする場合でも余分にお金がかかってしまったり、手間がかかることがよくあります。
それどころか、変化を追いきれなくなってしまい、それがトラブルの元となってしまうこともあるのです。
遺産分割協議書の記入事項
遺産分割協議書にきまった書式はありませんが以下の記載をするのが基本です。
・遺産分割協議が成立した日付
・共同相続人全員で遺産分割協議を行った旨
・共同相続人の住所、署名押印
・だれがなにを相続するのか?
土地や建物など登記が必要な財産に関しては、登記簿謄本のとおりに地目や面積を
記載する必要があります。
トラブルの防止には公正証書を活用しよう
また、さらにトラブルを防ぐ効果を高めたい場合は、遺産分割協議書を公正証書にしておく、という手段もあります。
公正証書にする段階で、公証人が間に入り相続人全員の意思の確認が行われます。そのため後々トラブルが発生しにくいのです。
さらに公正証書にしておけば、内容の正確性が保証されているため、その後の各種手続きをスムーズに行うことができます。
また、公正証書の原本は、公証役場に20年間保管されるので、その意味でも安心することができます。
もちろん公正証書にするには費用も手間も、そして時間もかかりますが、それだけに効果は高いのです。
分割協議に不満があれば、調停や訴訟手続きを
遺産分割の調停とは
遺産の分割協議がうまくいかず、遺産分割協議書が作れない場合は、調停の場に話し合いが移ります。
いきなり審判の申し立てもできますが、基本的には調停を行い、そこでの話し合いが決裂した場合、遺産分割裁判が行われ、審判決定が行われます。
調停は裁判ではありません。あくまでも裁判官や調停委員を間に挟んだ話し合いです。
これらの人たちが双方の言い分を聞き、内容をすり合わせて解決を目指すことになります。
遺産分割調停を行うには、まず家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行わなくてはなりません。
この申立ての書類は裁判所に用意されており、ネット等でもダウンロードできます。
これに記入を行い、手数料を添えて申立てを行います。
調停は裁判ではないので、弁護士だけにすべて任せるのでなく、相続人本人が出席しなければなりません。
ただ、相続の場合感情的にこじれてしまっている場合も多いためか、初回と最後以外は他の相続人と顔を合わせることはありません。
控室が分かれており、順番に調停室に入って、自分たちの主張を行います。
1回の期日で話し合いがまとまれば、そこで調停は終わりです。
しかしそこでまとまらなければ、何回も期日を重ねて調停を進めていくことになります。
調停がまとまれば、調停調書が作成されます。
これは非常に法的拘束力の強い書類で、成立した以上、その通りに遺産分割を行わなければなりません。
そのため調停内容に不満があるなら、拙速に調停をまとめず、しっかりと意見を伝えていく必要があります。
遺産分割の審判手続き(裁判)とは
この調停でもまとまらなかった場合、審判手続き(裁判)となります。
この遺産相続審判では、調停と同じように互いの主張を行い、それをもとに裁判所が審判を言い渡し、これに基づき遺産分割が確定されます。
遺産分割調停・審判は、手続き自体はそれほど複雑なものではありません。
提出する書類なども、集めるのにそれほど難しいものはないでしょう。
ただ、100%自分の主張が通るわけでもありませんし、どのようにすれば有利になる・不利になる、というものはあります。
そのため専門家からアドバイスをもらわなければ、適切な主張を行うことは難しいでしょう。
遺産分割協議がまとまらない、と予想される場合には、早めに税理士・弁護士といった専門家に相談することをお勧めします。
初回相談は無料ですので、お気軽に相続税の専門税理士が運営する「東京 相続税相談窓口」へお問い合わせください。